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『兄弟ゲンカ始末記 運動会編』 [2015/05]

kyodaigenka undokai.jpg

2015年5月19日火曜日。

今週末は小学校の運動会だ。
天気はどうだ?
風邪とかひいてねえか?
弁当のメニューは何にしようか?
親も気をもむ一週間である。


学校では運動会の練習まっさかり。
宿題をやっていた
5年生の長男からご報告。

「よさこいの練習の時、
 俺と○○が褒められたんだよ。
 よく声が出て、
 おしりも深く下がってるって」

おおー、すばらしい。
えらいえらい、
その調子でがんばれがんばれ。


そして、お次は2年生の次男が自慢。

「花笠の練習で、出る時なんだっけ」

退場?

「そうそう退場、退場する時、
 最後までちゃんとこうしていたって」

振付しながら歩いていた?

「そう、
 ちゃんとボクだけこうしていたって
 先生にホメられたんだよ」

おおー、すばらしい。
えらいえらい、
その調子でがんばれがんばれ。


そこで長男がアヤをつける。

「それって普通のことじゃね?」

始まりました。

「そんなのホメられることじゃねーだろ」

また、余計なことを。


「きーっ」

次男が長男の体にケリを入れる。
口より先に足が出るタイプ。

「なんでそういうイヤなこと言うんだよー」
と、次男。

「イヤなことじゃなくて、
 ホントのことだから」
と、全然平気痛くなーいっつー顔をしながら長男。

「ボクはイヤだって言ってんだろー」
と、今度はパンチの次男。

「ホントのこと言われて暴力、
 おまえサイテー」
と、アオリまくる長男。


こうやって兄弟ゲンカが始まる。
ホント、毎度のこと。


夜7時前。
となりの台所で仕事をしながら聞いていたが、
うるさいので二人を叱る。

キミたち、うるさいよ。
蹴ったりパンチしたり、暴力はやめなさい。
兄貴も弟の嫌がることを言うのはやめなさい。
言葉も暴力になるって言ってるだろー。


悔し涙目で次男が述べる。

「わざとボクのイヤなことを言うんだよ!」

はいはいはい。
それは弟がホメられてると悔しいからなんだよ。
兄ちゃんてのは
弟より上にいないと負けた気がしちゃうから
つい足を引っ張っちゃうもんなんだよ。

横で聞いていた長男が反撃。

「違います! 悔しくなんかないし」

あ、ないよな、悔しくなんかない。うん。

「足も引っ張ってないから!
 どっちかっていうと逆だから!」

逆か。

「そういう普通のことでホメられて
 図に乗ってると、
 コイツがダメな人間になっちゃうから、
 言ってやってるんです!」

あー、確かにあるな、あるある。
ホントにがんばった時にホメるのは大切。
でも、やって当たり前のことなら
ホメない方がいいかもな、むしろ。

「ボクはダメな人間じゃない!
 先生だってホメたんだから!!」

叫ぶ次男。
ちょっと論点ずれ気味。
でもまあ、気持ちは伝わる。

「あーあー、かわいそうなやつー。
 普通なことでホメられて喜んでればー。
 ベロベロバー」

兄の尊厳にかけて弟をこき下ろす長男。
ちなみに冷静な顔を装っているが、
やっぱり長男も興奮して、少し涙目。


さてさて。
ずっと二人の言い分を聞いている
時間も根性もないので、
そろそろ話のテーマを絞らなくっちゃな。
ま、今回は決まってる。
テーマは「普通」だ。

8対2くらいの割合で長男と目を見て話す。
どうせ、次男は長男の影響を
バリバリ受けながら生きていくので。


うんうん、「普通」ね。
確かに普通なことで誰かをホメても意味はない。
でも、「普通」ってのは難しいんだよ。

「難しくないでしょ! 普通は普通でしょ!」

その通り。
退場の最後まで演技し続けるのは「普通」。
運動会の本番ではみんながやり切ること。
でも、まだ今日はみんなできなかったんだな。
わかる?

「1年生も一緒だからだろ!
 小さなのと比べてできただけじゃん」

そう。
1年生はまだ学校通い始めたばっかだしな。
父ちゃん見てないけど、
1,2年生が一緒にやる今日の練習で
最後まで踊ったのは……
グランドを出る瞬間まで振り付けしていたのは、
たぶん、この弟だけだったんだな。
だから、先生はホメた。
普通のこと、当たり前のことだけどホメた。
ホメたのには理由がある。
狙いがあるんだな。
みんなができるようにしたい
っていう狙いがね。

「みんながみんな
 同じになんてならないし!」

確かに、そうかもしれない。
っていうか、全員が同じにならなくてもいい。
でも、みんなの力を上げていく、
「普通」を徐々に上げていくのが大事なんだよ。
サッカーの日本代表もそう。
おまえらの学校の勉強とか運動会もおんなじ。
……それに練習していけば、
お前らはどんなことだってたいてい
できるようになるんだよ。

(お前らはできるようになる)

びくっ。
この言葉を子供たちにしゃべりながら、
実は俺自身の中で軽くスイッチが入る。

(お前らはできるようになる……
 でも、俺はできるようになるのか?)

自分の言葉を反芻しながら、
自問自答している。
ちょっとドキドキしながら、
長男の返答を待つ。

一、「どんなにがんばったって
   できるようになんかならないよ!」

二、「そんなこと言う父ちゃんだって、
   ホントはできないことだらけじゃん!
   偉そうに説教すんなよ!!」

どっちが来るんだ?
一のあきらめムード型の答えか?
それとも、二の大人の現実型か…?

ドキドキドキドキ。
どっちの答えが返ってきても動揺しないように、
身構えながら待つ。

だが、返答は
予想しているものとは違う。

「でも、みんなができるようになったら
 俺がホメられなくなるじゃん」

かーっ。
そう来たか。
一気に心の温度が上がる。

こいつら、
自分の可能性をまったく疑っちゃいねえ!
おまけに、
オレたち大人の可能性も疑ってねえ!
なんという無防備な自信。
なんというおバカな自分達への信頼感。

うらやましい。
ジェラシーが湧いてくるのを感じている。
頭に血が上るのを抑えながら、
極力、声を低くしてしゃべる……。

そうだな。
確かにみんなができるようになると、
キミはホメられなくなるな。
うんうんうん。
それは残念だけど、大丈夫。
また、ホメられるようになるから。

「ん? なんで?」

まず、みんなが何かをできるようになると、
お前の仲間の中に
もう少しがんばるヤツが出てくるんだよ。
そしたらその子を先生がホメて、
みんなでまた「普通」を
レベルアップしていくんだな。
それを見ていると、
お前や弟も悔しくなって、
自分がまたホメられたくなって、
もう少しがんばるヤツになっちゃうんだ。

「そんなの大変じゃん!」

ま、大変なんだけどな。
そうしちゃうんだよ。

(オレはもうそんなことしないけど……
 ていうより、できないけど)

「そんな大変だったら、
 俺一人だけできて、
 低いレベルの中でホメられてたほうが
 全然マシだよ!」

(おいおいおい。
 それを言ったら、
 さっき弟に言ってたように
 お前自身が
 ダメな人間になっちゃうんじゃないかい)

などという言葉を言って長男を怒らすのは
野暮だし、
この日は「普通」のとらえ方講座なので、
別の言い方でここでは諭す。
ゆっくりと、本気スイッチ入りっぱなしで。


だから大丈夫だって。
どうせ、お前も弟も負けず嫌いだから、
「普通」じゃ我慢できないし、
「普通」を上げてくから、どんどん。
オレが止めたって、
お前も弟も、
お前の友だちも、
子供ってやつはバリバリ成長していくんだ。
だから父ちゃん、安心してるんだ。

「………」

ちょっと黙る長男。
微妙にホメられた感じがすると、
行き場をなくして言葉が出なくなるのだ。
次男は、半分聞き役に回されているために
もうすっかり冷静。

たぶん、オレが一番興奮している。
負けた感と嫉妬を抱えて。
ま、バレないように隠してるんだけどね。


じゃあ宿題やっちゃいな。
今日の晩ごはんはお好み焼きだー。


なんとなく一段落ついてしまって、
しょうがないな……という顔で
宿題を再開する兄弟。

もともと、
宿題がやるのが面倒くさくって、
現実逃避しようとして、
10歳と7歳の兄弟はケンカを始めたのだ。

何べんも何べんも繰り返す兄弟ゲンカ。
ホント、いつものこと。
そのたびに、
説教しているオレだけが
自分を見つめ直させられて、
本気になってしまう。


4日後の5月23日土曜日。

晴天のもと、
無事に運動会は開催されました。

100mの徒競走、
最後に追い抜かされて、長男は2着。
50mの徒競走、
出負けして追い上げるも届かず、次男も2着。

5年生の「よさこいソーラン」では
ほぼ全員のおしりがぐっと下がり、
声もよく出ておりました。

1,2年生の「花笠」も、
ほぼ全員が退場の瞬間まで
花笠をきちんと振っていました。

ほっと、一安心。


運動会の終盤、恒例の種目がある。
毎年、手に汗握り、
涙をにじませながら見ている。

6年生、組み体操。

一人ずつから二人組、三人組、
……やがて
全員で一つのピラミッドを作っていく。

全然「普通」のことではないことを
まるで「普通」のことのように
成し遂げていく
恐るべき子供たちの力。

今年もまた、
涙をにじませながら見た。

感動の中に、
嫉妬心が少し混じっていた。



    おわり。ケンカは終わらんが。

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