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『くちびるに歌を』 [2015/03]

映画『くちびるに歌を』を観た。
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「心の中の汚れている部分が洗い流されるよ。
 涙といっしょに」

と、
ちょっと酔っぱらっているおっさんの知り合いから
オススメされて観た。
俺の汚い部分も洗い流してくれるかなーと思いながら。


長崎県、五島列島のとある島の中学校に
臨時音楽教師としてやってきた柏木先生。

演じるは、ガッキーこと新垣結衣。

東京で
プロのピアニストをしていた彼女が、
親友の代わりに
合唱部の顧問を担当することになる。
で、
女子だけだった合唱部に男子も加わって、
合唱コンクールを目指して
練習していく。

歌う曲は、
アンジェラ・アキの
『手紙~拝啓 十五の君へ~』。

教師や生徒が
閉ざしていた心を徐々に開いていく、
触れ合わなかった部分も触れ合っていく、
そういう物語。


観ていて、
すごく“誠実”な映画だなあと思った。

ガッキーの演技も、誠実。
表情をなるたけ抑えて、
ドラマチックすぎないよう、
ぐっとこらえながら、
とっても丁寧に
悲しみに囚われてしまった女性に、
音楽の先生になっている。

画面やカット割りも、誠実。
物語や登場人物の気持ちに
観客がゆっくりじっくりついていけるよう、
奇をてらわないアングルや撮り方で、
しかも一つ一つの絵を
ちょっと長めに見せてくれる。

観ていて、
何よりいいなあと思ったのが、
合唱部にいる
ちょっと太目のメガネの女の子。

主人公の部長を中心に
4人の女の子たちが、
この合唱部の真ん中に立っているのだが、
彼女たちはやっぱり“美形”である。

映画なので。
銀幕の花なので。

ただ、時々、その4人の横や後ろに、
ちょっと太目のメガネさんが出てくる。

“美形”とは言えないが、
とっても愛嬌のある“素朴な花”が。

あ、うちの中学の合唱部にもいた気がする。
クラスにもいたよ、たぶん。

そんな感じを持たせてくれる女子。

彼女が画面に登場することによって、
ちょっと劇的を盛り込みすぎるシーンでも、
観客は置いてけぼりにならない。

ドラマチックな展開や、
湧きあがる感動が
押しつけがましく感じられない。

臨場感があるから。
観客がその場にいっしょにいられるから。

だから、
素直に観続けることができるのだと思った。

そこに、
監督のやさしさ、
観客に対する“誠実さ”を感じた。


35年ほど前、
俺も中学の時に
合唱部に臨時参加したことがあった。

映画の中の男子たちのように。

サッカー部のメンバーに
すごくピアノの上手い少年がいて、
彼が伴奏として呼ばれたついでに、
サッカー部の男たちが何人か
合唱部に加わったのだ。

コンクールまでの短い時間だったが、
いっしょに練習して、
いっしょにステージで歌った。

実は、
もともといた合唱部の女子たちの
顔や名前も覚えていないし、
それどころか
歌った曲すら今やもうハッキリしない。

よく覚えていることといえば、
顧問の女性音楽教師から教わった

「高い音は、
 あごを引くようにして、
 頭のてっぺんから出すといい。
 逆に、低い音は
 あごを前にして、
 のどを開くように歌うといい」

という歌声の出し方だけ。

音感もなく、
リズム感も悪く、
ちょっと変な声の持ち主である俺にも、
その音楽教師は
がんばって指導してくれたのだと思う。

今は曲名すら覚えてない
不誠実な俺なのに、
彼女はホントに誠実だったんだなーと
あらためて思い返した。


映画を観て、
それほど涙は出なかった。
心の中の汚れている部分は
さほど洗い流されなかったようだ。

でも、
15年後の自分に対して
「今より少しは誠実になってるといいかな、俺」
とちょっと思ったので、
まあ、いいことにするか。

65歳になったら、
また観てみようか。

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